牛商丑力株式会社

更新日:2023年05月11日

牛商丑力株式会社 専務取締役 富永 征駿 氏

「土づくり、草づくり、牛づくり、人づくり」。霧島の大自然の中、牛一筋、循環型農業を目指して

―社名に「うし」が二つも入っているので、牛にまつわるお仕事をされていると思うのですが、事業の内容をお聞かせください。

まず、『牛商丑力株式会社』が、牛を生産から肥育するところまで行っています。

そして、屠畜された牛を『牛商富永』で買い戻し、精肉販売しています。

また、『牛商丑力』では、枝肉で一頭販売したり、輸出の手続きを行ったり、県内外の飲食店などへの販売を行ったりもしています。

―生産から販売まで一貫して行われているのですね。その中で、今、一番注力しているのは?

自社で販売できる頭数を増やしているということですね。

近年、一頭買いしてくれる輸出業者が出てくるなど、輸出需要がすごく高まっていることと、令和3年11月に精肉販売を開始したなどという背景がありまして。

―一昨年前に精肉販売を始められたのですね。事業自体はいつ頃始められたのですか?

祖父が昭和33年に酪農業を始めました。今の社長の代になって、11~12年前に和牛に切り替えて、繁殖肥育を一貫して行う今の形に至ります。

 

―おじい様が始められて、現在はお父様が社長ですか。征駿さんも家業を継承されることを意識されていましたか?

最初は(家族を)喜ばすために「継ぐ」と言っていた感じです。

それが、大きくなるにつれて周囲から「征駿くんが継いでくれるから安泰だね」などと言われるようになり、引っ込みがつかなくなりました。

そうして、進路を考える時期になり、継がないという選択肢はなく、牛をやり始めたという感じですね。

 

―引くに引けなくなっちゃいましたか。いざ始めてみて、いかがでしたか?

それが、何をやってもうまくいかなくて!

学校の成績でも何でも、少しやってみればある程度できていたので、牛も同じように自信があったのです。そしたら、牛はできなかったんですよ。

卒業後、小林市に帰ってきてすぐ、父に「こっちの繁殖牛、全部見てね」と、60~70頭を一人で任されました。

わざわざ専門の学校に通ったのだから、「できる」という自負があったのですが、いざやってみると、牛が死んだり、種付けがうまくいかなかったり……。

―生き物相手の実践は思うようにいかなかったのですね。そこからどう立て直しを図られたのですか?

改めて勉強をし直し、餌のやり方を変えたり、成分表を出してもらったり、血液検査をしたり、うまくいくように少しずつやり方を工夫しました。

そしたら、目に見えて牛が良くなっていくのがわかるんですよね。

「こうすれば、こういう牛ができるんじゃないか」と考えて養った牛と、それまでの牛が、種類は一緒なんですけど、違って見えるのです。

そういう結果が出て、「ああ、この仕事、めちゃくちゃ良いな」、「楽しいな」と思えるようになりました。

―仕事に対する誇りが生まれたのですね。その仕事で大切にしていることは何ですか?

一番は社是にもあるのですが、「敬天愛牛」です。「常に公明正大、謙虚な心で仕事にあたり、天を敬い、人を愛し、仕事を愛し、会社を愛し、国を愛し、牛を愛する心」を心がけています。

人はもちろん敬って大切にしなければなりませんが、僕たちはやはり牛を大切にしないと。

牛にお金を稼がせてもらって、牛のおかげで仕事ができているので、「牛を大切に」。もう、それだけですね。

―では、こだわりは?

肥育するうえで、ステロイドのホルモンやビタミン剤、抗生剤等を、どこかで使うと思うのですが、弊社はなるべく薬剤に頼らない養い方に取り組んでいます。

それと、餌です。草を作るうえで、農薬や除草剤の散布を行わず、化学肥料や合成肥料も使用しません。自社でできた堆肥だけで草を育て、その草を食べた牛が子どもを産み、乳を与える、という循環型農業を行っています。

―餌も作られているのですね!

社長と相談して、きな粉や海藻粉末、大豆粕、麦、米ぬか等を少しずつ足したり引いたりしながら今の餌のベースを作っています。

肉になった時の旨味や脂質が改善できるよう、心がけて配合しています。

―人も牛も、食べる物が大事なのは同じですね。

それと、水ですね。

一番大事なんじゃないかな、と思っています。

弊社は、うちの山から出た水を各牛舎にポンプアップして流しています。

小林だからこそ、おいしい水、きれいな水が当たり前に使えるということが、とてもありがたいことです。

土地柄的な恩恵を受けられているというのは、本当に先祖のお陰ですよね。

胸を張れる仕事にするのは、自分自身。

―将来のビジョンなどありますか?

精魂込めて養った牛を、自分の名前で売りたいという思いが強くあります。

国内でも海外でも評価されている「宮崎牛」として販売できるのは、とてもありがたいことなのですが、やはり、手をかけてできた生産物を、胸を張って良いものだと言えて、さらに評価を受けていると実感できると、やりがいになると思うのです。

―従業員のモチベーションも上がりそうですね。

「敬天愛牛」の通り、牛はもちろんですけど、人も大切ですから。

大切な牛を養う上で必要となるのは人の力です。ですから、従業員皆さんの力で僕たちがこういう仕事をさせてもらえていることを本当にありがたいと思いますし、皆さんには楽しく仕事をしてもらいたいですね。

たとえば、子どもに「どんな仕事をしているの?」と聞かれたら、「『牛商丑力』という会社で牛を養っているんだよ」と、胸を張って言えるような。

-仕事を誇れる親、格好良いですよね。

若い子ももちろん、そうなってくれると嬉しいな、と思います。

従業員が、家に帰っても、「あの牛、そろそろ子離しだな」とか、「もう少しで出荷だな」とか、「5等級いけるかな」、「枝(肉)が何キロ取れるかな」などと考えてくれて、ワクワクしながら働きに来てもらえると嬉しいですね。

―そういう従業員が増えると、経営する側としても冥利に尽きますね。他にも、何か工夫していることはありますか?

ボーナスとは別で、手当てと言いますか、たとえば出荷奨励金みたいなものがあります。

牛を出荷して、5等級が出た時に、従業員全員に給料と別にプラスして出すのです。

「自分たちが頑張ったから、そういう牛ができたんだ」と、やりがいに繋がるのではと思いまして。

こちらが「こうした方が良いですよ」というより、従業員同士で「今回枝肉が多く取れたね。こういう牛を作らないといけないよね」などの話ができれば良いなと思います。

―では、最後に「働く」とは?

「働く」とは「稼ぐ」ことではないでしょうか。

稼ぐために仕事を一生懸命やって結果を出すと、仕事が楽しくなっていくと思うのです。

楽しくなればどんどん結果も出て、それを見た上司や同僚が、「こんなことしてみよう」と声をかけてくれたり、また、自分から「○○がしたい」と相談すれば、できるように考えてくれたり。

仕事の派生で自分のやりたいことがやれるようになる、そうやって仕事を自分で好きな仕事に変えていくことがすごく大切だなと思います。

相乗効果で給料も上がっていくので、稼げるようになっていくでしょうし。

仕事とは、自分でしたいように変えていくものかもしれないですね。


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総合政策部 地方創生課

〒886-8501
宮崎県小林市細野300番地 小林市役所 本館3階

電話番号:0984-23-1148
ファックス:0984-23-6650
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