明石酒造株式会社
明石酒造株式会社 常務取締役 杜氏 明石 太暢 氏
心を「明るく丸く、満月のように」。人々の笑顔を醸す酒造り
―本格焼酎を製造販売されている、明石酒造の特徴を教えてください。
弊社の代表銘柄は『明月』という、芋焼酎に米焼酎をブレンドした焼酎です。
えびの市は古くからの米どころなので、創業当初は米焼酎がメインでした。しかし、戦争で米が貴重品になり、焼酎の原料として使えなくなってしまいました。
そこで、隣の鹿児島県に倣って芋焼酎の製造にシフトして、戦後、元々持っていた米焼酎の技術を使い、芋焼酎とのブレンド焼酎『明月』を立ち上げました。
そういったいきさつで、ブレンド技術に長けており、バラエティに富んだ商品開発を得意としています。
―さすが、明治24年創業の長い歴史を感じます。
現在の社長が4代目になります。
初代と2代目の時には、農業の傍ら、時期になったら酒造りをして販売するというスタイルだったようです。
私の祖父である先代の時から、焼酎の製造販売を主とするようになりましたが、初代からの流れをくみ、今でも自分たちで米や芋を作って、農業も継続しています。
―地域との関わりも大事にされているそうですね。
西諸管内のイベントや祭りでは、主催者からよく声をかけていただき、ブースで焼酎の提供などをさせてもらっています。
そういうところで昔から地域との密着を大事にしていますし、今後も続けていきたいと思っています。社員も、賑やかなことが嫌いではないので(笑)。
もちろん、中には飲めない社員もいますが、会社の飲み会では、普段は物静かな人が飲むと意外とおしゃべりになったりして、「好きなんだな」と思います(笑)。
―お酒は意外な一面が垣間見えますよね。地域ではおなじみの『明月』ですが、名前の由来は何ですか?
先代が作った社是に「心を酔わす」とあります。
当時、終戦直後で日本全体が疲弊していました。そんな日本人の心を、「明るく丸く、満月のようにしたい」という思いでこの名前を付けたと聞いています。
―飲むと、まさしく名前の由来の通りになりますよね。では、明石さんが焼酎造りの道に進んだ経緯は?
元々、将来的にはえびのに帰ろうと思っていました。私が小学生か中学生の頃の記憶で、親から「学校を卒業してすぐ帰ってきても、(ウチでは)働かせないぞ」と言われたことが強く印象に残っています。
「外の釜の飯を食ってこい」ということだったのでしょう。
帰ってきたらすぐに焼酎造りの現場に回されて、仕事をしていくうちに焼酎造りがとても好きになりました。初めから造りたいと思っていたわけではなく、やり始めたら面白くなったという感じですね。
―焼酎造りの魅力はどんなところですか?
正直、焼酎造りには答えがないのです。毎年、製造が始まる時期になると、「今年はこういうお酒を造ろう」とプランを練るのですが、もちろん、うまくいくこともあれば、いかないこともあります。その繰り返しで、いつか自分が死ぬ前に「あの時造った焼酎は美味しかったなぁ」と思えるものができれば良いかなと思っています。焼酎造りは飽きることがありません。私が感じる『造り手のロマン』というものを、私だけではなく他の造り手とも共有していきたいです。
地域の人々と手を携えて。これからのえびので、守りそして生み出す焼酎の味
―長い歴史の中で、従業員の働き方などに変化を感じますか?
そうですね、特に近年は、今まで通りのやり方では通用しなくなっているように思います。しかし、これを好機と捉えて、会社としていろいろなことに挑戦しようと思っています。
上からの指示ではなく、従業員自ら、やりたいことがあれば提案をしてもらい、みんなで取り組んでいきたいです。
―従業員のチャレンジ精神を活かしていくということですね。
はい、私より勤務年数が長い従業員も、それぞれの立場や目線で、いろいろなことにチャレンジしています。
先ほど「焼酎造りに答えはない」という話をしましたが、正解か不正解かを考える前に、やりたいことをやってほしいです。それでうまくいけば「良かったね」、そうでなければ「またチャレンジ」、という働き方をしてもらいたいと思っています。
商品開発も、「売れ筋に寄せても面白くないから、プラスアルファのものを」、といった提案が結構上がってくるので、こちらとしても楽しみです。
―従業員の方々も働きがいがありそうです。明石さんご自身、目指すものは?
造り手として思うのは、「もっとうまい焼酎を造りたい」。
会社としては、「地域を盛り上げたい」とすごく思っています。特にえびのは人口が減って若い人が少なくなっていますので。弊社は原料に農作物を使うので、地元の農作物を使えば地域の経済が回り、そして、焼酎が売れれば飲食店や酒店に経済効果が生まれます。
このように、地域経済を循環させることで地域が発展し、また雇用が増えるという地域への貢献が、弊社のやるべきことだと思っています。
―地域と企業がうまく成り立つことが理想的ですね。
2018年に、硫黄山の噴火で川の水が濁って米作りができなくなった地域があり、農家の経営を直撃する事態となりました。
そこで弊社が考えたのが、麦焼酎の製造でした。麦なら水を引かなくても栽培できるので、米の作れない水田で麦を栽培し、その麦を使って焼酎を製造し、2020年に販売しました。
何かあった時に、手助けできるような、地域を支える取り組みはどんどんやっていきたいと思っています。
―最後に、明石さんにとって「働く」とは?
「成長すること」だと思います。私は正直、焼酎造りは趣味のようなものだと思っているので、「働く」という感覚ではないのです。焼酎造りで失敗してもつらいと感じないのですが、書類作成や従業員の管理など、事務的な部分では苦手なことも出てきます。それを乗り越えることは自分の成長にもつながります。仕事は、好きなことだけではありませんからね。好きな仕事では、探究心で夢中になるので、勝手に成長しますが、苦手な仕事を乗り越えた先にこそ、必ず成長が待っていると思います。
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更新日:2022年06月13日