社会福祉法人ときわ会

更新日:2022年12月13日

社会福祉法人ときわ会 理事長 坂口 和也 氏

赤ちゃんからお年寄りまで。地域を結ぶ、幸せの『絆』

―事業の内容を教えてください。

「介護福祉事業」、「保育事業」、「障害福祉事業」、「温泉事業」、「農福連携事業」の大きく5つを運営しています。

施設は、『特別養護老人ホームひなもり園』をはじめ、児童発達支援事業所Ohana、マザーヒルズ保育園など10施設程、他には地域の方の相談を受ける在宅介護支援センターや訪問看護ステーションなどがあります。

「子どもから高齢者までの暮らしを包括的に支えていく」というのが当法人の特徴です。

―幅広いですね! 『絆』という企業理念に反映されているように思います。

理念を制定するにあたり、全職員に取ったアンケートで一番多かったのが『絆』という言葉でした。まずは、利用者とそのご家族に安心してもらうための絆づくりが第一です。そして、災害時にすぐに助け合ったり、福祉を必要とされた時には積極的に受け皿となれるよう、地域の方々とのつながりも大事にしています。他にも、職員同士やその家族など、それぞれが強い結びつきを保てるよう努力したいと思っています。

―その思いがさまざまな福祉サービスの展開につながっているのですね。創業のいきさつを教えてください。

創業メンバーの一人が、先代理事長である父です。鹿児島出身ですが、祖父と共に祖母の故郷の小林で事業を始めました。実は、私の母が私を産んだ時に亡くなっていて、父は仕事の苦労を支えてくれた母と祖母に対する敬意と感謝を込めて、残された祖父母の暮らしを最後まで支えていきたいという想いから、老人ホームを作ることにしました。そこがスタートです。

―事業を継ぐにあたってどのような思いがありましたか?

私を5歳まで育ててくれた祖母が、認知症になりました。「あんた誰け?」と言われた時のショックは今でも忘れられません。その時は認知症に対する恐怖を持ったのですが、大人になってから、「認知症をどうすれば回避できるのか、または回復できるのか」というところに興味が湧いて、今それが原動力になっています。

―事業内容を拝見させていただくと、福祉事業が主軸の中で、温泉事業だけ異色に感じますが、温泉事業を始められたきっかけは?

温泉は、「老人ホームにいても温泉に入れるように」と、先代理事長である父が作りました。老人ホームに入ったら、温泉にはなかなか行けませんよね。

他には、「美人の湯に行けばあの人と会える」とか、常連さん同士が「久しぶりだね」、「生きちょったな?(笑)」といった、他愛のない日常や繋がり生まれる「まちの風呂屋」であれば良いなと思っています。

職員にも家族にも。安心の輪を広げる職場環境づくり

―老人ホームの中に保育園があるのですね。設立のきっかけは何ですか?

子育て中の職員は、子どもさんの体調不良などで保育園から呼び出しがあります。急行する場合も多く、本人も大変で不安でしょうし、一緒に働く職員も急に人が抜ける不安があります。そこで、みんなに安心して働いてもらうために保育園を作りました。

―子育て中の方はとても助かるでしょうね。障害児通所施設については?

身近に発達障害を持つ子がいたので、本人はもちろん、その子の親も安心して暮らせるために事業を立ち上げる必要性を感じました。障害は決して他人事ではありません。従業員にも、事業を通して「子どもの障害」、「大人の障害」、「子どもを保育していく上での問題点」などを身近に感じてもらえれば、当事者になった時も安心して働き続けることができるのではと考えています。

―従業員にとって、働きやすい環境ですね。

確かに、保育園や放課後等デイサービスなどを整備して、働きながら子育てができる環境というのは整ってきたように思います。しかし、それ以外の課題もたくさんあります。当法人の事業はサービスを提供する側も受ける側も、人が中心ですから、生理的なストレスがたまることは避けられません。福祉の現場では、人間関係による離職が一番大きく、夜勤もあるので生活リズムが崩れることによるストレスが人間関係を壊す要因ではないかと思っています。

―対人ストレスを抱えながら、不規則な生活リズムで働くのは大変ですね。

それらが原因で自律神経が乱れていくことが、現在の研究で明らかになっています。ですから、当法人の温泉やサウナを利用して、職員が深い睡眠を促し、しっかり休息を取って、自律神経を整えたりストレスを解消する、といったことにチャレンジしていこうと思い、職員は1人100円で温泉に入れるようにしています。道のりは遠いですが、ハード面の整備、ソフト面の原因、両方を改善していけば、本当の意味での「働きやすさ」が実現できるのではないでしょうか。

「人材育成」と「最良の仕組みの追究」。二つの大きな柱が変えゆく福祉の未来

―地方で福祉事業を運営することの難しさはありますか?

地方で暮らすことの最大の壁は、選択肢が少ないことだと思います。都市圏では、電車に乗って美術館や博物館、海や山に行くなど、いろいろな経験ができますが、地方では車がないと動けません。福祉の現場においても、「今までこうだったから」という慣習で、選択肢が少ないことが問題点です。ですから、新しい技術を取り入れたり、価値観を変えたりすることで、サービスの選択肢を増やしたいのです。理想の環境を作るためには、まず自分たちが動かなくてはと思っています。

―具体的にはどのような取り組みを目指していますか?

Uターンして帰ってきた時に、「田舎だからこれくらいで良い」、「都会のまねはしなくて良い」、「都会でしか通用しないよ」といった、地方を卑下する言葉をよく聞かされました。しかし、田舎でないとできないこと、都会に負けないことはたくさんあります。地方の資源を活かして、認知症や子どもの発達支援について、都市部とはひと味違う研究ができたらと思っています。できれば大学と一緒に研究して先端的なことを学び、質の高い人材教育をやっていきたいです。

―地方から新しい風を起こせると良いですね。

福祉の現場は、「ふわっ」としている面があり、「今までこうだから」、「こうした方が(何となく)良いから」と、感覚的なものに判断を委ねることが多いので、連携すべき医療の現場となかなか意思疎通がうまくいかないことも多いです。県内外の大学や研究機関、メーカーなどさまざまな機関と連携して研究を行い、問題の改善方法をより具体化していきたいと思います。

―福祉分野は人材不足が叫ばれて久しいですね。

福祉の経験や知識がない人でも3~4年で必要なスキルを持った介護福祉士になれる、人材育成のプログラムやカリキュラムをここ1年程でしっかり作ろうと思っています。当法人で人材を育て、地域に送り出し、また学びたいと思えば帰ってきてもらう、という流れを作れたら、利用者、地域の方をはじめ、みんなのためになるのではと思っています。

―最後に、「働く」とは?

「自分の人生を作ること」ではないかと思います。働いているといろいろな人と出会うわけで、必然的にその人たちの価値観を吸収し、良くも悪くもそれを自分の判断基準の一つにしていくと思います。そんな風に、働くなかで生まれる『出会い』が、自分を作っていくのではないでしょうか。


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総合政策部 地方創生課

〒886-8501
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電話番号:0984-23-1148
ファックス:0984-23-6650
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