生駒ファーム
生駒ファーム 代表者 冨満 哲夫 氏
理想の農業で地域を盛り上げたい。その理想と現実の狭間で
—『生駒ファーム』さんはどのようなことをされているのでしょうか?
花の苗や野菜の苗の生産を中心としたハウス園芸農家ですが、お米やにんにく、生姜といった野菜も作っています。
他にも農業体験や農家民泊というような仕事もしています。
今年で35年目になりますね。
—農業を中心とした事業をされているのですね。最初から農業を志していたのですか?
最初は就職しようという思いもあり、国家公務員なども受けて採用内定はもらっていたのですが、それが本当に自分が一生をかけてやりたい仕事なのかと考えたのです。
その時、農家のボトムアップを図ることで地域が経済的にも盛り上がり、農家が良くなることが一番だなと思い、指導する側ではなく、農業自営という道を選びました。
—現場という立場を選ばれたのですね。どのような道のりを歩まれましたか?
卒業後しばらく農業をしてみると、日本では作物の見た目の美しさを求める結果、農薬をかける仕事が多く、害虫より先に良い虫が死んでいってしまうことに気付きました。
その中で、「何か違うな」、「本当にこのままで良いのかな?」という気持ちが芽生え、本当に自分の目指したい農業というものについて見つめ直しました。
そして、日本の食糧問題はもちろん、世界の人口増と食糧問題も併せて、世界の食料を動かしているアメリカを見ておきたいと思ったのです。
そこで、2年ほどアメリカに行き、農家で実習をしたり、大学に通うなど、農業について勉強をしました。
—海外で学ばれたのですね。帰国後はいかがでしたか?
野菜や米は、とにかく安全で美味しいものを消費者に届けたい。そのためにはどうしたら良いか、日々、そして毎年毎年工夫しています。
花も毎年の気候で出来が全然違うので、「きれいな花だね!」と言ってもらえるように、技術的な面など勉強しながら、小さいところから取り組んでいます。
起こりうる食糧危機。食料確保に大切なこととは
—これから先の「食料」を考える際に大切なことは何でしょう?
日本の食料自給率を上げなければならない。そのために一番重要なのは「家庭菜園の普及」だな……と。小さなことですけど(笑)。
農家は野菜を作って販売し、地方にお金を引き込むのが仕事ですが、農家でない方も、できるだけ自分たちの食べる分は自分たちで作ることが大事だと思います。
世界的な食糧事情や生産能力を見ると、食糧危機に一番直面しやすいのは日本なのではないかと感じているからです。
—食料自給率の問題などもよく耳にします。
だからこそ、いざというときの食べ物を自分なりにどう確保するか、どこかで考えておくべきですね。
専業農家が作ったものは都市部の消費者に送る体制を、地方の人たちは自給自足ができる体制を作る、そのためには家庭菜園を普及させることが大事だと思っています。
自分一人が多く作ったからと言って、誰かに影響するものではないのですが、一人でも多くの人たちが実行したり、また理解してくれるだけでも、大きい力となって将来に繋がっていくのだと思うのです。
「食」を通じて、みんなが繋がる未来を目指す
農家は食料を生産し、消費者は農家と連携して、いつでも安心して食べ物を確保できるようなシステムを作っておかなければ、と常々思っていました。
それが昨年、農業体験や民泊という形で具体化しました。消費者と交流したり、修学旅行に来た子どもたちや、地元の学生を農業体験で受け入れるなど、農家の現状を見てもらったり農業の話をする機会を得ています。
—消費者に農業を知ってもらう、貴重な体験ですね。
以前、韓国からの留学生に二週間農作業をしてもらったところ、「このような苦労をして、おじいちゃんやおばあちゃんがお米を作ってくれたのだと思うと、大事に食べないといけないと思った」と言ってくれて、それを知ってもらっただけでも良かったと思いました。
また、東京農大の学生には、冬にジャガイモ掘りをしてもらったのですが、一生懸命体を鍛えている若い子たちが70歳代のおばあちゃんたちについていけなくて。
—学生たちも、良い刺激を受けたでしょうね。
ですから、学部に関係なく学生時代に農業体験をしてもらいたいです。そしてその先、野菜を食べる時には、体験で学んだ農家の大変さや苦労を思い出してくれたら良いなと思います。
そうすると、野菜のロスや野菜の見方もまた違ってくると思いますので、私たちも体験の機会をたくさん作らなければ、と思っています。
—体験から学ぶことの大切さを感じます。他に取り組まれていることはありますか?
農作業を通して機能回復になればと、福祉施設に作業委託をしています。
また、不登校の子を預かったり、毎年外国からの研修生を受け入れています。
その人たちができる範囲の仕事をしていただき、給料を支払うというのも農家の仕事の一つだと思いますし、日本の農業や社会を体験してもらい、地域活動で活躍してくれるような青年を育てたいと思っています。
一口に農業と言っても幅が広く、使い道はたくさんあるのではないかな、と。
大きくは望みませんが、一人でも二人でも、誰かのために農業が少しでも役に立てば有り難いです。
—作物を育てながら、人も育てて、地域にも貢献されているのですね。
農業は自然を相手にするだけでなく、その中で働く人や消費者にも向き合っていく仕事なので、正直かつ真面目でありたいと思っています。
自分の故郷である小林が好きだから、やっぱり小林で仕事をしたいし、住んでいる地域が良くならないと次の代に譲ることもできませんし。少しでも良い故郷を次の代に残せるような活動をしなければ、と思っています。
—最後に、冨満さんにとって「働く」とは?
「自分の一生の中でやりたいことをやる」
自分が一生かけてできることをし、追い求める、それが仕事なのかなと思います。
農業を通して、生きがいを持って、自分のためだけでなく、社会のため、世の中のため、地域のためになるような活動をしていきたい。
それが自分にとっての「働く」ということなのかな……。
この記事に関するお問い合わせ先
総合政策部 地方創生課
〒886-8501
宮崎県小林市細野300番地 小林市役所 本館3階
電話番号:0984-23-1148
ファックス:0984-23-6650
お問い合わせはこちら
- このページについて、皆さまのご感想をお聞かせください。
-
更新日:2022年06月13日