Kokoya de kobayashi
Kokoya de kobayashi 地井 潤シェフ
霧島の山と湧水が育んだ、豊かな食の発信地として
―小林駅の南側、静かな住宅街にある創作フレンチレストランです。『Kokoya de kobayashi(ここやっどこばやし)』の、『Kokoya de』とは、どのような意味ですか?
「ここだよ」という意味の小林の方言と、私の母が営んでいた食堂の名前『ここや』を合わせたものです。
―地井シェフは大阪のご出身と伺いましたが、小林でお店を始められた経緯は?
小林市が『食と農の魅力創生事業』という、食を介して地元の魅力を発信するプロジェクトを立ち上げ、その地域拠点となるレストランのシェフを募集していたのがきっかけです。
―以前は大阪でシェフをされていたのですか?
大阪で、連日行列ができるようなお店の総料理長をしていました。その前は、10年近く日本大使館の公邸料理人としてヨーロッパでのキャリアもあり、その辺が小林市の求める人材と合ったようです。
―小林に行きたいと思った理由は何ですか?
やはり、料理とは素材ありきです。すぐそばの畑で採れたばかりの野菜と、そこから長距離輸送されたものでは、鮮度も風味も明らかに違います。生駒高原の梶並農園さんの野菜などは、カルチャーショックというくらいのおいしさで。できればこういう野菜を採りたてで使いたいという夢が膨らんでいたところに、ちょうど小林市のプロジェクトを知ったというわけです。
―良いタイミングだったのですね。
ここに移住したいという気持ちの半分以上を占めていたのが、母親のことでした。当時、末期のがんを患っていた母が、故郷である小林できょうだいと一緒に過ごしたいと言っていて、それがちょうど小林のプロジェクトの時期と重なりました。お店がオープンした年に亡くなりましたが、母の希望を叶えることができたという意味でも、良いタイミングでした。
―お店のこだわりはどんなところですか?
『地元食材』ですね。大体80%くらいは地元産の食材を使っています。ただ、海から離れた小林では、海の幸だけは揃えることができません。しかしそこもこだわって、魚は地元の淡水魚を中心に使っています。中でも一番のこだわりが『鯉』。鯉は濁った川にいる魚、というイメージでしたが、湧水で有名な出の山で食べた鯉の洗いが、生なのに全く泥臭くなく、とてもおいしくて驚きました。
―小林を代表する食材の一つですね。
食育の授業で、地元の小学生などを相手に「鯉って食べたことある?」と手を挙げてもらうと、まばらなんですよ。逆に、「まぐろは?」と尋ねると、みんな手を挙げるのです。
―確かに、大人になってから鯉のおいしさに気付く人が多いような気がします。
鯉の洗いにはからし酢味噌が定番ですが、これは子どもが好む『たれ』ではないのです。子どもは酸味や苦味が苦手。鯉はおいしい食材ですが、食べ方や嗜好性で、敬遠する若い方が多いと思います。はちみつなどを加えた洋風のからし酢味噌ドレッシングを合わせたり、季節のフルーツを使ったドレッシングでカルパッチョ仕立てにすると、若い方にも喜んでもらえます。
―食材の魅力がたくさんの人に伝わると良いですね。
小林の鯉がおいしいのは、やはり『水』なのです。鯉が育つきれいな水のある環境もお客様に知ってもらうため、お店で力を入れている食材です。
何もないけれど何でもある、小林。そこで描く夢とは
―料理の他に、小林で『暮らす』魅力は何ですか?
大阪では、朝から夜まで一日中ビルの中、移動も地下から地下で、日に当たる時間がありませんでした。自然を身近に感じて暮らすのが人間らしいと、ずっと思っていました。小林は、「何もない」、「テレビも民放二局しか映らない」、とよく言われますが、そんなことはありません。「何もないことあるかい、山なんか人間には作られへんぞ、スカイツリーは人間が作れるけど、高千穂峰は絶対人間には作られへんど」なんて、高校生などには偉そうに言いますが(笑)。
―お仕事のモチベーションとなるものは何ですか?
自分でお店をしていると、井の中の蛙になってしまいます。ですから、他の団体とのイベントにはできるだけ足を運ぶようにしています。その時々で新メニューを考えるのも楽しいし、新しいヒントを得ることもたくさんあります。お店を切り盛りしながら、色々な企画にも携わっている、というのが楽しくて、やりがいにつながっています。
―将来やってみたいことがあれば教えてください。
お店で食事を楽しんで、その後もゆっくりしていただく、その空間で全て完結できるのがベストなサービスなのではと思っています。ミシュランの三つ星レストランとはどんなところかと言いますと、そこに料理を食べに行くために旅をするような場所なのです。私も、「ディナーでゆっくりお酒を楽しんで、宿泊までできるような場所を作りたい」、という夢はありますね。
―それは最高ですね!
もう一つ、実家が大衆食堂をやっていました。実は私も、カジュアルで大衆的な、気軽にお料理と飲み物を楽しんでいただけるようなお店もしたいと思っているのです。
―では、従業員の働く環境についてはいかがですか?
スタッフには、「小林を何らかの形で盛り上げたい」、「小林に貢献したい」、という気持ちを持って働いてほしいと思っているので、これまでに私がシェフとして知り合った、たくさんの方とつながることで、良い刺激になればと思っています。それから、基本『仕事は楽しく』。もちろん怒ることもあるんですよ、関西弁で(笑)。でもやはり、気楽に話せるフランクな関係でいたいと心がけています。スタッフにはいつも本当に助けてもらっています。
―最後に、地井シェフにとって「働く」とは?
一言で言うと『生きがい』でしょうか。余暇にリフレッシュするのも、全て仕事につながっていると思います。「仕事が生きがいって、何てしょうもない男や」と言われるかもしれませんが、本当にやりたい仕事ができて、とても幸せです。一生携われる仕事に巡り合うという幸せを、若い人にも感じてもらえたらと思います。
私は、生まれ変わってもまた料理人、やりたいですよ。
この記事に関するお問い合わせ先
総合政策部 地方創生課
〒886-8501
宮崎県小林市細野300番地 小林市役所 本館3階
電話番号:0984-23-1148
ファックス:0984-23-6650
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更新日:2022年06月13日