株式会社 ひなもり銘木

更新日:2022年06月13日

株式会社 ひなもり銘木 代表取締役社長 丸野 泰宏 氏

溢れる木への愛情と、あらゆる角度から木を知ってもらおうという情熱と

―清々しい木の香りでいっぱいですね。まず、事業の概要を教えてください。

主に銘木と呼ばれる、材木の中では質の高いもの、例えば樹齢数百年のものや、屋久杉や社木など歴史的価値のあるものを中心に、建築材や木製品に加工し販売しています。

―1949年創業という、歴史のある会社ですね。

先々代が始めて今年(2021年)で72年になります。40年前に現在の西小林へ移転しました。この地域は霧島から近いこともあって、霧島の山で切り出された質の良い原木がトロッコ列車で運ばれてきていたので、当時は小林駅周辺に製材所が多くありました。材木が一般住宅や文化財の材料にも使われていた昔に比べて、今は建築様式が変化し、和風建築の需要が減ってきているので、新しいプロダクトの開発も行っています。

―どのようなプロダクトがありますか?

今、自社のブランドとして『HINAMORINOKI(ひなもりのき)』という、まな板、お箸、プレートなどの小物ブランドを展開しています。同じ木でも、質が違えば雰囲気が変わるので、同じ製品というのはほとんどありません。今はSNSで世界とつながるので、例えばオーストラリアの方から「この材料は何?」、「この大きさの製品はないですか?」などと問い合わせが来たりもします。木目によって価値が変わるところなど、日本人のわび・さびが現れているのかもしれないですね。

―お箸やプレートなど、生活に身近なものが多いですね。

お箸などは、先代である私の母の考案です。母は全くの素人で木材の業界に飛び込みました。一主婦の目線で、きれいな木目や樹齢数百年の木を生活の中に取り入れたいという思いで、箸やスプーンを作ったのがきっかけですね。

―身近な製品だからこそ感じられる贅沢感がありますね。

木は基本的に霧島山系の良いものを使って、色合いや本質を楽しんでもらう、というコンセプトなので、手作りではなく、機械で作って価格を抑えています。まずはお客様が手に取りやすいように、という思いです。

―他にも、木を身近に感じてもらう試みをされているのですね。

昨年から『千年の森とつながる暮らし方』というイベントを開催しています。お客様に、弊社倉庫で銘木を触ってどんなものか感じてもらったり、社内の展示場にお茶の先生を呼んで、和の空間でお茶を楽しんでもらったり、という内容です。まずはいかに木のことを知ってもらうか、だと思っています。

―次々と新しい事業に挑戦されていますが、先代から事業を継承されたきっかけは?

私が20歳の頃に父が亡くなり、母が事業を継いだので、その後は私がやるべきなのかなと漠然と思っていました。

卒業後、一度戻ってきたのですが、愛知に5年間修業に出て、5~6年程前に戻ってきて今に至ります。

修業先や全国の銘木店を回ってみて驚いたのは、弊社の木の質や素性の良さがずば抜けているということでした。先代の目利きと管理の素晴らしさに気付き、私も本腰を入れて事業に取り組もうと思ったのです。

『時を紡ぐ仕事』。千年の森を次の世代へ

―新しい事業を展開していくうえでの課題などありますか?

今はとにかくいろいろなプロダクトに挑戦しようという思いがあります。

和室の材としての木の需要が減る中でも、木をもっと使い、環境を循環させないと、山は荒れる一方です。

山の価値も下がっていて、譲り受けてもらえないかという申し出が度々あるのも現状で、何とかしてその価値を上げたいとも思っています。

『素材屋』である私が、お客様からの「こういう形にできない?」という提案や要望に極力沿うように知恵を絞り、決まりきった使い道ではない、素材の新たな可能性を探っていきたいと思っています。

―木への深い愛情を感じます。

木の魅力は、削りなおせばずっと使えるところです。

樹齢100年の木は100年使えると言われています。

私も、父が小さい頃使っていたちゃぶ台を、一人暮らしをする時に削りなおして使いました。木はそんな風に手を加えながら受け継がれていくものです。森が形成されるまで、大体200年から1000年くらい。我々の人生を優に超える時を経てここにある木を、さらに次の世代へつなぐ、私の仕事は『時を紡ぐ』ことだと思っています。

―仕事へのモチベーションは、木への愛情なのですね。

そうですね、やっぱり木が好きなのかな。だから「もっと知ってほしい」、「使ってほしい」という気持ちでいろいろなプロダクトを考えたり、マーケティングをしているところはありますね。単純にそこなのでしょう。

―これからやってみたいことなどあれば教えてください。

今、戦後に植えた木が伐採時期になっています。弊社の山も伐採して、2年程前に植林を始めました。その山を使って木育(もくいく)のイベントをしてみたいです。それから『霧島ツアー』。霧島の山をお客様と見て回った後、弊社で「あの山から採れた木がこれですよ」と材木や製品を見てもらうというものです。

弊社の方針として『山を元気に』をスローガンにあげているので、その第一歩として、まずは木に興味を持ってもらい、ファンを増やしたいと思っています。

―一緒に働く人に望むことはありますか?

これから先、いろいろな人とタッグを組んでやっていきたいです。木材加工でも、例えばベンチなどの椅子や食器など、それぞれのプロの人たちと、一緒に良いものを作っていきたいと思います。プロの仕事を目の当たりにして、自分の技術を磨いていくのは楽しいことです。やはり、楽しめないことには続かないと思うので。

従業員にも達成感とその楽しさを味わってもらうため、「この仕事はあなたに任せます」という風に、責任感を持てるよう仕事を振っています。結果を気にせず、とにかくやってみてほしいと思っています。

―最後に、丸野社長にとって「働く」とは?

「思いを形にできる場」、だと思います。手段、とでも言いましょうか。「木を使ってほしい」、「知ってほしい」という気持ちをいかに形にするか、という。プロダクト、ツアー、形はいろいろあると思いますが、それがお客様に認知されれば必然と売上げという形で結果が出ると思います。もちろん情熱がないと絶対できないことですね。


この記事に関するお問い合わせ先

総合政策部 地方創生課

〒886-8501
宮崎県小林市細野300番地 小林市役所 本館3階

電話番号:0984-23-1148
ファックス:0984-23-6650
お問い合わせはこちら

このページについて、皆さまのご感想をお聞かせください。
このページは見やすかったですか (必須項目)
このページの情報は役に立ちましたか (必須項目)
このページについての要望