HANNAH(ハンナ)
絵とおしりぱんとコーヒーのお店『HANNAH(ハンナ)』。
市外から人を呼び込む、地域の憩いの場
—どのような仕事をされているのですか?
まず一つがカフェ部門です。そして、妻である入江万里子が画家ですので、画家デザイン部門。また、私は、「アウトドアステーションえびの」でコーディネーターもしているので、アウトドア部門ですかね。
—お店の名前にはどんな由来があるのですか?
一つは、ヨーロッパの女性の名前から来ていて、「恩恵」や「恵み」という意味があります。もう一つは、私がえびのに来て最初に覚えたえびの弁で、“あなた”という意味です。親しい人に使う方言で、「はんな(あなた)どっから来たんな」と言われたことが嬉しくて。地元のご年配の方々にも簡単に覚えてもらえるように『HANNAH』にしました。
—それは親しみやすいですね。お店を始めたきっかけは?
私は宮崎市出身なのですが、えびの市には、お酒を飲まない人が遊ぶ場所や、女性がゆっくりくつろぐ場所がないんですよ。
えびの市は、熊本、宮崎、鹿児島の県境で、霧島連山で構成された国立公園もあるし、人が来る理由はすごくあるのです。
ですから、人が来るラインを作れる場所を運営できたら面白いかな、作りたいなと思いました。
—その思いがカフェという形に?
自分たちにしかできないことは何か、と考えたときに、私が元々パン屋をしていたので、「パン屋をしよう」、「そこでカフェもしよう」と思いました。
妻も、「自分の絵を飾って表現する場所を作りたい」、「ワークショップや絵画教室も開きたい」と話していました。
そこで、祖母の家が空いていたので、「そこの馬小屋を使ってお店をやるか」という簡単な乗りで始めました。
—お二人の特色を活かしたお店なのですね。リノベーション時に工夫した点は?
馬小屋感を残すために、野地板(のじいた)をあえて残したり、石蔵がちょっと見えるようにしました。
他にも、妻の絵がカラフルなので、それが映えるようにシンプルな白い家にしています。
“古民家だから和風”ではなく、あえて現代的な建物にすることで、絵が生きるためのモダンな空気をかもし出しています。
ここでしかできない、田舎だからできる、ということにこだわりました。
都会など外から来た人たちが見たら「新しい、面白い建物」、地元の人が見たら「馬小屋がこんなに変わるっちゃね」と、見る人によって印象が全然違うんですよね。
—奥様の絵のお話がありましたが、デザインのお仕事はどのように取り組まれていますか?
この一年で、いろいろなパッケージのお仕事をいただいたり、プロジェクトチームに参加させていただいたりしました。
えびのは米や野菜などの素材がすごく良いのに、デザインでそれが上手く伝わっていないから勿体ない部分が多いと感じています。
デザインなど、「地元同士でコラボできたら良いな」と思っています。
—地元コラボのデザインは、ぜひ見てみたいです。デザイン部門での役割分担は?
クライアントの所に二人で伺い、私が注文する方の思いや、こだわりを聞き出します。後は、妻が画家の観点で見て、その人から得た雰囲気、こだわりの部分を生かしつつ、うまく形にしていっていますね。
「好きなこと」が「仕事」に。自分も周囲も笑顔になる仕事を生みだすために
—さまざまな事業を展開されていますが、切り替えが大変そうですね。
誰がきっかけでどんな仕事に繋がるか分からないので、常に周囲にアンテナを張っています。
カフェは「いつか持てたら良いな」という昔からの夢でしたし、波乗りや山登りやキャンプなどのアウトドアもずっと好きなんです。自分のしたかった好きなことが仕事になっているので、良い意味で仕事とプライベートの境目がなくなった感じです。
—プライベートの延長に仕事があるといった感じでしょうか。課題などは、どう対処されていますか?
課題や苦労は、「まあいいか」ではいけないのですが、私の場合はそれで済んでいるような気がします。
しんどかったり辛かったりしても、一瞬の喜びのために登山や波乗りをするように、自分ができることをしんどくない程度にするようにしています。良い波が来ている時はしっかり乗り切り、波がない時にはバタバタしない。など、オンオフをしっかり分けて。
思い通りにいかないことの方が多いし、人に迷惑をかけることもたくさんありますが、仲間など周囲の人たちに恵まれているので、理解してもらったり助けてもらったりしています。
—波の見極めが肝心ですね。一緒に働く方たちに、求めていることはありますか?
『HANNAH』のコンセプトは、しっかり伝えているつもりです。
年代によって受け入れ方は全然違うので、いろいろなやり方があって良いと思います。そこをしっかり理解しあって同じフィールドに立つ。そして、スタッフが楽しむ。そうでないと、良いお店と言えないと思っています。
— “スタッフが楽しんで働けるお店づくり”を心がけていると。
そうですね。雇用する側になって、「この人たちがいないと、自分の生活が成り立たない」ということに気付きました。ですから、すごく大事にしたいし、スタッフたちも一生懸命やろうと思って当店を選んでくれているので、絶対裏切るわけにはいきません。私もみんなと同じフィールドに立って、同じ目線で仕事をしたいと思っています。
—これから、展開していきたい活動はありますか?
素材やフィールドやきっかけなどを繋いで、みんなで磨き、「この土地に思いがある人」たちの思いがしっかり伝わるような仕事やお金が生まれることをしたい、とずっと考えています。
縁があってえびので好きなことをさせてもらい、周りから応援していただいて、すごく恩を感じています。
恩返しに、下の世代が輝ける場所を、私たち40代が作っていかなければ、と。
都会に出た若い子たちが、えびのが楽しいまちだと気付いたり、えびので遊んだ思い出がきっかけとなって、帰ってきてくれれば良いなと思っています。
—若い人が増えて、まちが活気づくと良いですね。最後に、「働く」とは?
間違っていると思いますけど、「遊び」です。
楽しまないとお金はついてこないと思います。
- このページについて、皆さまのご感想をお聞かせください。
-
更新日:2022年06月13日